夏のひとひら
まっすぐな夏に取り残されて
ひざを抱えてうずくまっている
本当に少しの間だけ微笑んだ風景が
安物のフイルムに焼きついてしまった
真っ青な空のずっとずっと彼方
ゆるい放物線を描き残して
真っ白い光に溶け込んでいった
騒がしい蝉の木を黙らせてしまった
もう誰が触れることもない
この手の元へと帰ることもない
せめてそんな思いで見送って
ただ一枚のページをめくるだけ
まっすぐな想い受け止められず
斜めに過ぎた春がよみがえる
傷つけることもなく傷つくこともなく
始まりのない終わりがどこかで過ぎ去った
もうやけを起こすことはない
それだけの歳はとってるつもりだ
夕立がこの季節に幕を引く
ただ一枚のページをめくるだけ
自転車を転がす早朝のバイパス
派手にかっ飛ばされた白球の記憶
肌寒く感じる風に涙さらわれて
ただ一枚のページをめくるだけ
ただ一枚 ページをめくるだけ
詞 青琴野カズ
コメント